眠れない総長は眠り姫を甘く惑わす
◇
「………、痛っ」
寝返りを打とうと体重を傾けた瞬間、体の痛みで目が覚めた。
体中が疼くように痛い。
痛くて思うように動かない。
私、どうしたんだっけ……
「………」
ぼーっとする思考のまま、とにかく重い瞼を持ち上げる。
「ぇ……」
自分の掠れた声が空気に混じって消える中、
見えた白い天井に全身がサーッと冷えていくのがわかった。
だってここ……どこ?
頭が急速に冴えると同時に、体の冷えも加速する。
わからない。
ほんとに、なにも。
どうして怪我をしているのか、とか。
ここはどこなのか、だけじゃない。
自分が誰なのかも、歳も、家も、家族の名前も、自分の顔すらも……
なにもわからない。
私は──────ダレ?