眠れない総長は眠り姫を甘く惑わす



銀くんは暴走族とは思えない、柔らかい雰囲気を持っている。

物腰も口調も雰囲気も、普通の男子高校生よりよっぽど穏やかそうだけど……。



「銀くんも御影さんに、拾われたの?」

「拾われた?」

「行く当てがなかったんすよね!」

「ああ、そういう意味か。うん、僕も帰る場所がなくて行き倒れてるとき、助けてもらった」



行き倒れ……。

この時代のこの国で、そんな言葉を現実として聞くなんて。



「だから御影くんには、本当に感謝してる。彼のためならなんだってするよ」



ああ、そうか。って、思った。


銀くんを救ったのも御影さんだけど、

暴走族には似つかわしくない穏やかなこの人を、『忠誠』という名でここに縛りつけているのも御影さんなんだ。



歪んだ世界の歪んだ絆を、目の当たりにした気分だ。



「みのりちゃんも、御影くんに助けられたんだよね?」

「え?」

「鬼炎魔に拘束されそうになったって聞いた」

「あ、うん……」



そうか、私も同じだ。

訳あり人間で、彼に拾われた一人。


私も、歪んだ世界から……御影さんから、抜け出せなくなるのだろうか。


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