眠れない総長は眠り姫を甘く惑わす
御影さんが私のことを、抱きしめてくれている。
体全部を包むみたいに、体全部でぎゅっとしてくれている。
肩の辺りを優しく擦られて、耳元から「大丈夫」って聞こえ続けて……
震えるままもたれかかったその場所で、私は静かに目を閉じた。
ブルブルじゃなく、ガクガク震える体。
驚いたのは、御影さんにくっついていたら、次第に恐怖心が薄れていったこと。
まるで何かの魔法みたいに、スー…っと消えていったこと。
どうしてこの腕の中が、こんなに落ち着くんだろう。
少しだけ冷静になった頭の中で考えてみても、答えなんてわからない。
もしかしたら、本当に魔法にでも掛かったのかもしれない。
だって、私……
この部屋に、この人の傍に、この腕の中にずっといたいって思ってる。
暴走族なのに。総長なのに。住む世界が違うのに。
どうしてそう思うのか、それを考えているうちに……
「みのり?」
「すぅー……すぅー……」
考えているうちに、私は意識を手放すみたいに眠ってしまった。
そんな私の体を、もう一度ぎゅっと抱き締めて……
「……大丈夫だから。もう、全部忘れろ」
呟いた御影さんの声は、夢の中にまでは届かなかった。