眠れない総長は眠り姫を甘く惑わす



「……それでも、いいです」

「ふーん」



適当な返事の直後、御影さんの体が少し動いたと思ったら私の頬に手が伸びてきた。

それだけで鼓動が騒ぎ始めて、余裕が全て奪われる。


無表情なのに触れる手つきは優しくて、油断すると一瞬で捕らわれてしまいそう。


自分の心臓の音だけが、この世界の唯一の音みたいに響いて……



もしかしたらもう……とっくに捕らわれているのかもしれない。


寄せられる顔に、抵抗する気も起きず目を閉じた。



「ん、……」



ふわりと触れた唇が、柔らかい。


優しく甘噛みされた下唇が、もどかしい。


もっとしてほしいって思っていたら、そんな想いが伝わったのか……



「……んっ……」



御影さんが身を乗り出して、私の腰を引き寄せ激しく奪った。


気持ちはどんどん加速して、もっともっとって欲張りになる。

応えるだけで精一杯で、私からなんてなにも出来ないくせに。


そんな欲しがりな私に少し笑って、また、気持ちのいいキスをしてくれる。


< 51 / 244 >

この作品をシェア

pagetop