眠れない総長は眠り姫を甘く惑わす



恐らく胸に向かう手を、慌てて掴み阻止する。



「……なんだよ。襲ってもいーって言ったの、お前だろ」

「言った、けど。ほら、今日は時間がないから」

「時間……?」

「学校、今日からですよね」

「あー……」



モゾモゾ動いた御影さんは、仕方なしと言った感じで一人先に起き上がる。

未だ横になっている私に手を差し出して、「ん」と言った。


手を、出せってこと?

同じように差し出すと、掴まれてグイっと引き起こされる。


その勢いで御影さんの胸に埋まったかと思えば……

座り込んだまま、広い腕が私をぎゅっと包んだ。



「……今日、すげーよく眠れた」

「そ、それはよかった、です」



これは、お礼のハグ?

よくわからないけど……


朝からこんなふうに抱きしめられる、って。

やっぱりなんだか、恋人同士みたいじゃない……?


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