眠れない総長は眠り姫を甘く惑わす
「で、最上階は御影くんの部屋になってるんだけど」
「けど?」
「実は、僕も入ったことはない」
「二番隊の、銀くんも?」
「うん、御影くん自身も滅多に行かないみたいだし。広い部屋は落ち着かないからって、小さなアパートを借りてるくらいだから」
「そ、っか」
「そもそも完全プライベートな場所だし、特別な人しか入れないんだと思う」
特別な人。
もしそこに入れてもらえたら、御影さんの『特別』って、少しは自惚れてもいいってことなのかな。
隣の席の銀くんに、こっそり色んなことを教えてもらった転校初日。
クラスメイトはみんないい人ばかりで、困ったこともないまま時間は過ぎ……
あっという間に迎えた、昼休み。
「あ……」
銀くんと購買へ行く途中、突然の睡魔に襲われる感覚がした。
そういえば、怪我の後遺症で過眠症気味だって御影さんに言われたっけ。
この感じだと絶対、お昼からの授業は無理だ。
そう判断して、銀くんに保健室に行くことを伝えた。