眠れない総長は眠り姫を甘く惑わす
「それ、嫉妬したってこと?」
「! 違っ……」
「は? 違うのかよ」
今度は舌打ち交じりに目を細めて、なんだかつまらなそう。
「んだよ、妙な気起こしかけたわ」
……どういう、こと。
嫉妬したって、素直に言ったほうがよかったのかな。
「つーか小町のあれは、怪我の手当てしてただけ」
「……怪我?」
「あいつ、ホワイトターミナルに来てるバイトなんだよ。清掃の」
清掃……あ、だからバケツを。
「小町の親、両親揃ってすげーろくでなしっつーか。いわゆる育児放棄ってやつで、普通の親がしてくれることはほぼ皆無って言ってた」
「……それで、ホワイトターミナルに?」
「俺が直接雇ってる。小学生の弟が二人いるみたいで、そいつらのために金が必要っっていうあいつの気持ち、無下にできねーんだわ」
そう、だったんだ。