月下美人に逢いに行く
一気に必死に出すまいとしていた涙が溢れそうになり、必死に目を見開きぼやける薄暗い天井を見渡す。




君が教科書全部を家に忘れた時、
君が消火栓のボタンを興味本位で押して停学になりかけた時、
君がバク転をしようとして失敗して動かなくなった時。




どんなに幻滅し呆れるようなことを思い出しても、今君にそんなことを言われている俺以上に惨めなやつはいないよ(笑)。




「ははは(笑)ありがとう、そうしとくよ。俺に好きな人ができたら今度は俺の相談ものってね。」



そう嘘を吸い、大きく息をも吸う。



「じゃあ俺そろそろ寝るよ。幸せになってくれよ。」




そして、今までで一番大きな嘘を吐いた。



幸せになんてなるな。
そいつが浮気でもして俺のとこに泣きついてこればいい。そしてそのまま俺に依存して俺がいないと生きていけなくなればいい。



君が幸せだと思っていたこと、当たり前だと思っていたことを全部全部、ぶち壊してやりたい。



君は嘘をつけない人だった。何があっても正直に話した。



俺はそういうところも好きだった。
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