離れていた時間
3. 頬を伝う涙


 私は無言で、母の顔を見つめる。


 母は見ていたアルバムを投げ捨てて立ち上がり、放心状態。

 大きな怒鳴り声を耳にした父も、慌てて家の中に飛び込んできた。

 立ったまま体を震わせる母を見た父が、私に向かって「何があったんだ!」と叫ぶ。

 でも、状況を見て理解したのか口を閉ざしてしまう。


「すべて、正直に話すしかないわね……」


 母は父に向かって小声で呟いた。

 父も「そうだな……」とだけ言って、天井を見上げる。

 家具や家電製品、椅子など日用品の無い部屋の中ですべてを知った。


 父は不倫相手だった今の母と再婚。

 私が二歳の時だったみたい。

 離婚した前妻との間に、二人の子供を授かったと父は話す。


 私が手に持つ写真は本当の母親で、ベッドの赤ちゃんは弟なんだって。

 姉と弟、二人の子供を一緒に育てられないと言う本当の母親の訴えで、父は姉の私だけを引き取り、不倫相手だった今の母と再婚して自分たちの子供のように今まで育ててくれたみたい。




 真実を聞いた私は、心が動揺して言葉が出てこないよ……




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