今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
「寂しいけど仕方ない。
もしチーが嫌なら」


視界に入らないだなんて、自分で言ってて悲しくなるけど、たぶんここまで言えば千桜は……。


チラッと彼女を見たら、どうしたらいいか迷っているみたいだ。


あともう一押しかな。


「チーに嫌われたら悲しいな……」


しょんぼりして俯く。


しばしの沈黙の後。


ガタッ。


彼女は勢いよく椅子から立ち上がった。


「違うっ、嫌じゃない」


「え?」


「嫌じゃないよ、びっくりしたけど嫌だなんて思わないよ」


心配そうな瞳で必死にうったえてくる。


「翔くんのことを嫌いになったりなんかしないよ」


「……」


「だって……」


さすがにいつものように大好きとは言ってくれないか。


「本当に?」


俺が表情を和らげると彼女はホッとしたようだ。
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