今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
「はい、大丈夫です」


「おやどうされましたか?いつもと様子がちがいますね」


彼は私達のかすかな異変に気が付いたのか怪訝そうに尋ねる。


「え?なにか、おかしいですか?」


矢代さんのさぐるような眼差しに、あたふたした。


「ええ、お顔が赤いようです。お熱でも?」


矢代さんは熱を測ろうとしたのか私のおでこに手を伸ばす。


すると、後ろから強い力で腕を引かれてよろめいた。


気が付くと、翔くんのたくましい胸にもたれかかっていた。


「……っ」


たちまち、触れ合った部分が熱くなったような気がした。


「なんでもありません、大丈夫ですから」


兄が私に代わってそう答えると、矢代さんはフッと笑った。


「おおこれは、失礼いたしました、坊ちゃん」


「……いえ」


兄は自嘲気味に笑う。
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