今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。

「ストップ、もうそのくらいで勘弁してください。早く行きましょう」


まだ続けようとする矢代さんにキッパリそう言って、急いで靴を履く兄。


矢代さんは兄の幼いころからの教育係らしくて時々昔の話を持ちだしてくるらしい。


それに伊集院家の次期当主に心から心酔しているように見える。


親馬鹿ならぬ執事馬鹿っていうか……。


こういうところが兄は苦手だって思ってるのかも。


それにしても愛華さんって誰なんだろう。


「あの、翔くん愛華さんって？」


小声で彼に尋ねると、驚くような答えが返ってきた。


「俺の妹」


「ええっ？いもうと？」


「うん、ごめん。チーには話してなかったね。半年前くらいに父が再婚したんだよ。その相手の連れ子なんだ」


「そ、そうなんだ。だから翔くんの妹になるのか……」


そんな話は初耳だった。