今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
「だってなかなか会いに来てくれないんだもん。愛華寂しかった。
でもこれからは同じ学校だし毎日会えるね」


彼女の甘ったるい声はいかにも作り物みたいだと思った。


「前にも言っただろ。俺は瀬戸の家で暮らしているんだから伊集院家にはしょっちゅういけないって」


「えーやだやだ。だって知らない人ばっかで寂しいんだもん。もっと遊びに来てよう」


甘えるような上目遣いで彼を見上げて、寄り添うように身体をくっつける彼女。


ううっ、なんだかこの子、ベタベタしすぎじゃないかな。


あんまり馴れ馴れしく触って欲しくないなって思ったけれど口にだす勇気はなかった。


でもなんだか、喉の奥が重苦しくてもやもやする。


兄もどうしてだか彼女を引き離そうとはしない。


そのことにも苛々する。


「愛華、紹介するよ。この子が以前に話してた妹の千桜だよ。千桜、愛華だよ」
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