今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
「まず、私の方が背が高いし並んだ時にちょうどいいでしょ。
それに、私の方が大人っぽいし、頭もいいわよ」


しかし、容赦なく勝負は始まったらしい。


「……」


「外国暮らしも長いから英語、フランス語なら完璧に話せるわ」


「待ってください」


このまま彼女が止まりそうにないから、思わず口を挟んだ。


「なあに?」


「妹の優劣ってそんなことで決まるんですか?」


「あらじゃあ、どんな基準があるっていうのよ?」


「いえ、だからそれは」


言葉に詰まる。この続きを言うのを躊躇する。


どうしようかな、言ってしまってもいいかな。


「なによ?」


ええい、もうどうにでもなれ。


少し間をおいてから遠慮がちに口を開いた。


「一緒に過ごした時間の長さとか濃密さとか」


翔くんと私、誰にも邪魔されることのない特別な時間をたくさん過ごしてきた。
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