今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
今日はいつもの兄なのかもしれない。


ドアを握る手を緩めたら、突然ドアノブを強い力で引かれる。


「ちょっとチーと話がしたいんだけどいいかな?」


「え、話って?」


「話をするだけだから」


「あ、うん」


結局、いとも簡単に翔くんは部屋に入ってきてしまった。


両親はいつも帰りが遅いから今この家には彼と2人きり。


こんなのいつものことなのに、凄く緊張する。


彼は私のベッドに腰掛けて手招きする。


「チー、隣に座って」


いつもと変わらない穏やかな声を聞いたら、昨日のことが何かの間違いなのかもしれないと思った。


「う、うん」


「どうした?」


「ううんなんでもないよ」


ニコッと自然に笑ったつもりだったけど。


私、いまどんな顔してるかな。


ちゃんと自然な感じに振る舞えてるんだろうか。


胸が小さく鳴っているように感じるのは気のせい……でもないかな。
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