今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
「いや、すぐに返事しろなんて言わない。ちゃんと待つよ」


「じゃ、じゃあ考えるね。
でもでも、わからないの。
翔くんのことを男の人として見れるかどうかって」


そもそも私には恋愛経験もなくて、好きの種類もひとつしかない。


兄のことが好きって気持ちは、特別すぎて恋愛のそれかどうかもよくわからない。


「うん、難しいよな。これまで家族としてしか接してなかったんだし。
無茶なこと言ってるってわかってるよ」


「……」


「チー、試してみようか」


「試すって?」


「んー、口で説明するのは恥ずかしいな」


兄は照れ臭そうに瞳を揺らせる。


「ほらチーおいで」


両手をひろげてこちらへ視線をやる彼。


爽やかな笑顔についつい吸い込まれそうになる。


これまでの私なら何にも考えずに彼の胸に滑り込んでいっただろうな。


でも今はさすがにためらっちゃうよ。


だって、目の前にいる彼は兄というより……。
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