今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
「チー、少しだけだから」


「う、でも」


石像みたいにカチンコチンに固まって動けない。


すると、兄は長い腕をこちらへ伸ばしてきた。


「えっ……」


あっというまのことで自分の身に何が起こったのかすぐにはわからなかった。


力強く抱き寄せられたかと思ったら、彼の膝の上に乗せられていて。


「少しの間こうしてて」


今は愛おしそうに髪を撫でられている。


「チー、大丈夫?」


「う、あっ、はい」


恥ずかしすぎて目を合わせられない。


息がかかりそうなくらいの至近距離に彼の端正な顔がある。


胸の鼓動がはちきれんばかりに騒ぎだす。


うそ、どうしよう。さすがにここまで密着すると兄と言えど恥ずかしい。


なにも考えられないくらい顔がカーッと熱くなる。


それどころか息をするのさえやっと。


兄の身体ってこんなにたくましかったっけ。


彼の胸や腕はこんなに硬かったんだ。私とは全然違う。

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