今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
「やったぁ」


それなのにいとも簡単に彼は彼女のお願いを承諾してしまった。


愛華さんが嬉しそうに微笑しているのを見たら、私の中で何かがパンってはじけたような気がした。


完全に心が墨色に染まりきってしまった。


「やめ……て。はなしてよ」


気が付いたら彼のもう片方の腕をとってグイッと自分の方へ引っ張っていた。


「え?チー?」


兄は驚いたように私をまじまじと見つめる。


「どうした?」


「翔くんは私のお兄ちゃんなんだから」


喉の奥から絞り出すように声を張り上げた。


「ちょっとなによ、あんただけじゃないでしょ。私にとってもお兄ちゃんなんだから」


気の強い彼女は負けじと言い返して彼の腕を強く引き寄せる。


「ちがう、私の方がずっと前からだもん」


「前も後も関係ないでしょ」


「関係あるよ、翔くんは私のなんだから」

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