今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
まさに修羅場だ。


こんなの全然嬉しく無いぞ。


「チー大丈夫?」


赤い顔を手で隠しながら小刻みに肩を振るわせている千桜に声をかけた。


周りに人が集まりすぎて大騒ぎになってしまっていた。


恥ずかしくて消えてしまいたいって顔をしている彼女。


こんなに瞳を潤ませて羞恥にたえる彼女がたまらなく愛しい。


今すぐ抱きしめて周りから見えないように隠してやりたいくらいだ。


ってそんなこと考えている場合ではない。


このままだと千桜が可哀想だ。


早くこの場から連れ出してやらないと。


「チー、行こう」


「へ」


一瞬俺を上目遣いに見上げてすぐに目線をはずす。


最近の彼女はいつもこんな感じだ。


真っ直ぐに俺を見てくれない。


「ここから離れるぞ」


「うん」


彼女の手を握りしめて一緒に走りだした。


ひとごみをかき分けて行こうとした時、うしろで愛華の怒り狂った声がしたけど、気にしている余裕がなかった。
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