今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
ごめん、愛華。いまは千桜が緊急事態なんだよ。


それに、いつだって俺が優先するのはこの世に1人だけ。


繊細で頼りなくて甘え坊の可愛い俺の妹、千桜だけだから。


そう言えば昔からよくこんなふうに千桜を連れて走ったっけ。


あれはいつだったかな。


ああそうだ、親が千桜を叱ってた時に見ていられなくて連れ出したんだっけ。


忘れ物が多いとか点数の悪いテストを隠したとか可愛い理由だったけど俺は千桜がちょっとでも悲しそうな顔をするのが見ていられなくて。


まったく甘くて駄目な兄だよ。


いまもこうして彼女を困らせて不安な気待ちにさせてしまって。


そのくせ彼女が嫉妬めいた感情を見せてくれたことにドキドキしてる。


今の俺は呆れるほど自分勝手だな。


千桜を連れて廊下の端まで走って階段を駆け上がった。


すれ違う生徒達に怪訝な目で見られたけど気にも留めなかった。


俺の頭の中は千桜のことで一杯だから。


「チーここへ入って」
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