今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
無防備に小さく開かれた唇から目を逸らせる。


「どうして、意地悪するの?」


拗ねたような口調。


もうとっくに頭がどうにかなりそうだ。


その時、俺の背中に回した彼女の手が食い込むくらい強くなる。


もしかして俺のこと煽ってる?


いやまさか千桜にかぎってそんなことは……。


無意識にならありうるのか。


そう言えばさっきも変なことを言ってたよな。


今朝は俺と目も合わせないで避けてたくせに、兄貴のままでいなくてもいいみたいな言い方をしてた。


そう言われて、混乱してしまった。


進むべきか、引くべきか、これはかなりの難問だ。


普段から女の気持ちとかよくわからない。
千桜もやっぱり女なんだよな。


「どうしてギュッてしてくれないの?いつもみたいに……」


恥ずかしそうに上目づかいで見つめられた。


俺がいつもみたいに抱きしめないから拗ねているみたいに見える。
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