今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
力づくで着替えさせるなんて横暴だ。


本当に捕まえようとしてきたから急いで逃げた。


「待て」


「やだやだ、こないで」


「こらこらやめなさい」


「翔っ、いいかげんにしなさい」


リビングのソファの周りをぐるぐる逃げ回ってから急いで扉を目指した。


「翔、やめなさい」


すると母が私と兄の間に立ちふさがって助けようとしてくれた。


「母さん、どいて。チーに逃げられる」


「あんたはなに馬鹿なことしてるの、少し落ち着きなさい」


呆れたように兄を叱る母。


ありがとう、お母さんっ。


頭に血が上った兄を止められるのは母だけだ。


今のうちに逃げようって思い、急いでリビングから出て行った。


もうっ、無理やり着替えさせようとするなんて無茶苦茶だよ。


2階の自分の部屋へと続く階段を駆け上がって行こうとしたその時、玄関チャイムが鳴った。


ピンポーン。


なんだか嫌な予感がして立ち止まった。


いち早くインターホンに出たのは兄みたいで。
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