今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
だけど、玄関ドアが勢いよく開いて中から兄が飛び出してきた。


なぜか右手には木製のバットを持っていて正気とは思えない表情。


ギロッと睨まれたので、西原くんの腕から手を離した。


ううっ最悪かも……。


なんだかクラッと眩暈がしてきたんだけど。


「チー、ちょっと西原くんと話をさせてもらえるかな?」


冷静を装うような落ちつきはらった兄の声。


笑顔をつくってはいるものの目が全然笑っていない。


「駄目、バットなんて持ってきてどういうつもり?」


さすがに恥ずかしくなって、長身の兄をキッと睨み上げた。


「ああこれは最近運動不足だから素振りでもしようかと思って」


シレっとした顔でとぼけている。


「うそ、いつもそんなことしないじゃん」


両手をあげてここから先は通してあげないって意思表示をした。


「急にやりたくなったんだよ。ちょっとそこどいて」


「や、やだ」


「どけ」
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