今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
しかも、それを本人からじゃなくて他の人の口から聞くことになるなんて。


「そうですか、翔が泊まってくると言ったんですか」


「はい、坊ちゃんのご意志です」


母は一瞬少し寂しげな表情をしたけれど、すぐに切り替えてこう言った。


「じゃあ、着替えを準備しますね。
少しここで待っていてくださる？」


「あ、いえ奥様、必要なものはこちらで揃えさせてもらいますので」


「いえすぐですから」


待っててくださいねと言って母は2階へ上がっていった。


たぶん兄の部屋へ着替えをとりにいったんだろう。


「恐縮です」


矢代さんはさっきよりも深く頭を下げる。


お母さん、大丈夫かな。


気丈にふるまってたけど動揺していたみたい。


きっとショックだろうな。


これまで兄が伊集院の父親に会いに行くことは時々あったけど、急に泊まってくるなんてことなかったのに。


いくら愛華さんにひきとめられたからって
、あんまり考え無しの行動だ。
< 200 / 443 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop