今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
お母さんの気持ちをもっと思いやってあげてもいいのに。


自分の息子が離婚した旦那さんの新しい家族に関わりすぎるって母親としてどんな気持ちなんだろう。


繊細な問題だし、私がいま口を挟むことじゃないかもしれないけど、黙っていられなかった。


「あ、あの矢代さん」


靴を脱ぐと、階段下にいる矢代さんへ詰めよった。


「千桜さま、こんばんは」


「こんばんは。
さっきの話ってどういうことですか?」


挨拶もそこそこに噛みつくように問いただしてしまった。


矢代さんは私の様子に目を見開いたけど、事務的に返事を返してきた。


「翔坊ちゃんは本日伊集院家にてお泊まりになられます。
たった今奥様にお許しをいただいたところです」


「こんな急に泊まってくるって勝手に決めて。
母を不安にさせるようなことしないでほしいです」


矢代さんに言ってもどうにかなることじゃないかもしれないけど、母がかわいそうだと思った。


大人の世界のことはよくわからない。
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