今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
だけど、さっきの母が一瞬寂しそうだったから気になった。


「本当に兄が泊まるって言ったんですか？」


「はあ、それが……。
はじめ愛華さまがどうしてもとしつこくお願いされても翔様はいつものように断っていたんですが。
愛華様がとうとう泣いてしまわれて。
それで仕方がなくといった感じで」


矢代さんは申し訳なさそうに白状した。


そうか、伊集院家に行くといつも愛華さんに引き止められているんだな。


愛華さんの兄へのあの執着ぶりを考えたら、仕方ないのかもしれないけど。


ほんとに兄としてってだけで懐いているのかどうかわからないな。


そう思うとなんだか嫌な気分になる。


「泣いたからって」


ズルいよそんなことでひきとめるなんて。


愛華さんのキャラからして、そんなヤワなタイプには見えないし嘘泣きなんじゃないの？


彼女だったらやりかねないよ。
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