今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。

けれど、少しして優しい口調でこう言われた。


「ですが、奥様には言いにくかったです。どんな風に言えばよいか、しばし悩みました。」


「ごめんなさい。
矢代さんだってこんな役目辛いですよね」


八つ当たりしてしまって悪かったよね。
矢代さんはちょっと変わっているけど、決して悪い人じゃない。


「いえいえ、私はこれが仕事ですから。
ですが、感動いたしました。
千桜さまがそこまで奥様のことを想ってくださっていて嬉しいです」


顔を輝かせて私の手を両手でガシッと握りしめて何度も頷く彼。


そしてありがとうございますとお礼を言われた。


少し大袈裟に見えるけど、矢代さんにとっても母はかつて仕えていた人。


だからこそやっぱりこんな板挟みの役目はしんどいだろうな。


「いえそんなの当然です。
私の母でもありますから。
でもすみません、生意気言って」