今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。

歌ちゃんはなだめようとしてくるけど私は聞く耳を持たなかった。


「やだ」


「千桜ってばー」


困ったようにオロオロする歌ちゃん。


私は腕を胸の前で組んで、眉を吊り上げていた。


いつ兄とばったり会ってもいいようにムッと怒った顔をつくって待ち構える。


「とにかく、教室にいこう。話はゆっくり聞くからさ」


「待って、やっぱりこっちから行ってつかまえる」


「つかまえるって誰を?」


「翔くんに決まってる」


私はせっかく脱いだ外靴をもう一度履き直すと正門の方へ早足で歩き出した。


いつも通りなら多分そろそろ来るはずの時間だ。


「ちょっと千桜待ちなって」


歌ちゃんも慌てて私の後を追いかけてきた。


「正門前で兄妹喧嘩なんてやめなよー」


「ほっといて」


歌ちゃんの制止も聞かずに正門へ向かった。


もう自分を抑えられそうにないくらい身体中がカッと熱くなっていた。


「あっ……」


正門で人だかりが出来ていたからすぐにわかった。
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