今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
そのために最近になって週に2度、平日の学校帰りに伊集院家に通っていた。


いわゆる跡継ぎ教育を受けているわけだ。


矢代さんは俺の先生として、父の会社のことなどを教えてくれている。


「千桜さまのことで何かいいことがあったんですか?」


図星をつかれたけど、嬉しくてちょっと笑った。


実は誰かに聞いてもらいたい気持ちがあったから。


こんなこと友達とかには簡単に話せるようなことじゃないけど、矢代さんなら事情を分かっているから安心だ。


「わかりますか?」


まあ、バレバレだろうな。矢代さんは俺のことは何でもお見通しのようだから。


「ええ、それはもう。坊ちゃんの頭の中はいつも千桜様のことで一杯ですから」


「ハハ」


そんな風にはっきり言われて苦笑いした。


高校生の男なんて好きな女の子のことで胸がいっぱいだ。


大人の矢代さんから見たらさぞ滑稽に見えるかもしれないけど。


「ようやく、千桜とのことが進展したのでホッとしたというか」

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