今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
翔くんが伊集院家に引っ越すなんて、そんなことあり得ないよ。


だってそんな話は彼から一言も聞いていないから。


「何も知らないの?お兄ちゃんたら話してないんだ」


「なにを?」


「教えない」


思わせぶりな言い方をされてイラッとした。


「……っ」


うぬぬ。


愛華さんて相変わらず、人の神経を逆なでするのが上手い。


私がやきもきするところが見たいだけかもしれない。


その手には乗らないからって思ったけど、やっぱり気になる。


ちょっと探りを入れるつもりで話しかけた。


「あの……お兄ちゃんが最近よくそっちのおうちに行ってるみたいだけどそれは勉強のためなんだよ。それは知ってる?」


「そうね、伊集院家を継ぐのはお兄ちゃんだもんね」


「そ、そう。でもまだまだ先の話だし」


「あら、そんなに先の話ってわけじゃないわよ」


「へ?」
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