今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
これから翔くんと放課後デートの予定だったんだけど、さっきのことが頭から離れない。


「チー、そんなに気になるんだったら俺が愛華に連絡してみようか?」


彼はポケットからスマホを取り出す。


そして心配そうに私を覗きこんでいる。


「うん、ごめん。そうしてもらえる?」


しょうがないか、彼に口止めの電話をしてもらおう。


気は進まなかったけど、彼が電話をかけるのを隣で息を殺して見ていた。


「愛華、ちょっと今いいか?」


彼の優しい声に胸の奥がキュッと絞られる。


いつもそんな話し方するの?


それとも今日は特別?


彼にしたら向こうも妹なんだから、親しく接しても仕方がないんだけど。


どうしよ、私ったらなんだか心がモヤモヤして嫌な気分。


自分が電話してほしいって言ってかけてもらったくせに。
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