今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
不安そうに揺れる瞳。


ああ、こんな風に困らせたくなんてないんだ。


本当はいつだって笑っていて欲しい。


「……」


彼女の表情が一瞬曇りかけたので、その両方の頬の肉をプニッと片手でつまんだ。


唇を尖らせるようななんとも可愛い表情になる。


「ほえ?」


間の抜けた声を漏らす彼女を見てアハハって盛大に笑って見せた。


「変な顔」


「やめへー」


「うわやべー」


ゲラゲラ笑ったら彼女は顔を真っ赤にして両手をジタバタして俺から離れる。


「ひどいっ、もうっ意地悪っ」


「ごめんごめん」


俺はなおも笑いながら謝った。


「心配して損したっ」


「ハハ、ひっかっかった。これですっかり目が覚めただろ」


「私もやり返したい、翔くんじっとしてて」


「時間がないから無理」
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