今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
その事実を聞いて一瞬、胸が痛んだ。


「そうなんだ、もう無くなっちゃうんだね」


俯いたら自分の足にポツッと雫が溢れ落ちていった。


悲しいのか、寂しいのか、すぐにはわからなかった。


そう感じる前に自然に涙が溢れてしまっていたんだ。


「チー大丈夫?」


翔くんは心配そうに私の肩を抱き寄せる。


「ん、翔くんがいるから平気」


たとえどんなに悲しくて泣いても、いつだって彼がそばにいてくれる。


いてくれてよかった、彼は私の精神安定剤だから。


「いつでもここにいるよ」


「うん」


彼はポケットからハンカチを取り出して、そっと私の涙を拭いてくれた。


彼の瞳が不安そうに揺れるからこれ以上心配をかけたくないって思った。


もう大丈夫だよって伝えたくて、彼を見てうなずいた。


翔くんはそれから私が落ちつくのを待って一緒に観覧車に乗ろうと提案してくれた。
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