今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
それから父は翔くんの方に視線を向けて低い声でこう言った。
「千桜には普通の幸せをつかんでほしい、平凡で穏やかな……」
「それはどういう意味?どうしてそんな……」
全身からサーッと血の気が引いてしまうような気がして小さく叫んでいた。
「言ったままの意味だよ、千桜にはちゃんとわかってるはずだ」
「……」
それは父からの忠告のような気がして、私は黙って唇をかんでいた。
ほんとうは父だってこんなことを兄の前で言いたくなかったかもしれない。
普段から翔くんのことを実の息子のように可愛がっているのを知ってる。
あえて言葉にしたのは、父なりに私達を想ってのことなのかもしれない。
だけど後から思うと……。
私はどうしてここでもっと言い返すことが出来なかったのかとても後悔した。
翔くんのために、私はちゃんと父に反論すべきだったのに。