今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
さっき彼が両親へ告白しようとしていたのを私が邪魔してしまった。


言葉を呑み込ませてしまった。


ひどいことをしたっていう自覚はある。


もしかしたら彼は怒っているかもしれない。


臆病な私にガッカリしているかもしれない。


だからせめてごめんって謝りたかった。


「あの、私、さっきは……」


最後まで言い終わらないうちに彼は穏やかに笑ってくれた。


「そんな顔すんなって」


ポンって優しく頭に手が乗せられたから、胸がジワリと熱くなる。


「翔くん」


どうして私を責めないの?


どうしてそんなに優しいの?


どうしてそんなに……強いんだろう。


「ほら、笑って。母さんたちに変に思われるぞ」


声を潜めて優しく言われた。


「翔くん」


「お兄ちゃんでいいよ」


ほっぺたをそっと撫でられた。


「えっ、どうして?」


「呼び方は元に戻していいよ。落ち着くまではそうしよう」


「でも……」
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