今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。

そんなに急いで大人になる必要なんてある?


「焦らなくてもいいんじゃないかな。それよりもっと早く帰ってきて。
一緒にいてほしいよ」


彼が寝ぼけているのをわかってて、お願いした。


すると、返事が返ってきた。


「うん……、でもダメなんだ。もうチーの近くにはいられない。早く家を出ていかないと行けないから」


「ええっ」


思わず飛び上がりそうなくらいびっくりした。


いま、家を出るとか言った?


なにそれ、どうしてそんな……。


「お兄ちゃん、やだよ、行かないで」


うちを出て、伊集院家に行きたいの?


ずっとそのつもりだったの?


いつだったか、愛華さんが言っていたように向こうの家族と一緒に暮らすってこと?


家を継ぐってやっぱりそういうことなんだろうか。


「ダメなんだ、俺がいたら……だからはやく」


「お兄ちゃん、どこにも行かせないよ」


彼の腕に夢中で縋り付いてグイッと引っ張っていた。

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