今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
襲うって?どういう意味で言ったの?


もしも私が思いあたる意味と同じだったとしたら……倒れそう。


「ごめん、今のは忘れて」


彼は額に手をあてて、恥ずかしそうにぼそりと言った。


その耳がうっすらと赤くなっていることにドキドキした。


「う、うん」


「もう寝るよ、おやすみ」


こっちを見ないでそう言って逃げるようにリビングから出て行こうとする。


「あ……待って」


引き留めたら、彼はぴたりと立ち止まってちょっとだけ振り返る。


「ん?どうした?」


「あ、やっぱりいい。なんでもない」


「じゃ、おやすみ」


「おやすみ」


ほんとはもっと言いたいことがいっぱいあったけど疲れている彼を少しでも早く休ませてあげないと。


それにこれ以上顔を見ていたら、ついつい本音を言ってしまいそう。


こんな時に跡継ぎ教育なんて受けていないで、ずっと私のそばにいて欲しいって。


寂しいって弱音を吐いてしまうかも。


そんなの嫌だもん。翔くんの重荷になりたくないよ。


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