今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
「でも俺がこんな気持ちを抱えている限り、もうこの家で暮らすことは出来ない。
父さんたちに申し訳ないし、気まずい思いをさせたくないから」


「翔……」


「チーは、俺のことを兄貴としてしか見ていないよ。だから、安心して」


「……翔、待ちなさい。父さんたちにもう少し時間をくれないか」


必死で引き止めようとする父の声を聞いたら切なくなった。


この10年間、父だって兄を大切に思って育ててきたはずだから。


こんな形で家を出て行くことを望んでいるわけがない。


「ごめん、父さん。
これ以上俺がこの家にいたら、みんなに負担をかけそうで……嫌なんだ。
母さんとチーには俺からちゃんと話すから」


そこでガタンと席を立つ音がしたから、慌ててドアから離れた。


お兄ちゃんがいなくなる。
もう家族じゃなくなっちゃうの?

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