今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
はっきり言って、いまは勉強どころじゃない。


問題を読んでいても全然頭に入ってこない。


だけど、勉強目的の合宿のため全科目合格点をもらわないと解放されないんだ。


もっと頑張らないといけないのに、集中できなくてどうしようもなかった。


「あ、ごめん。ボーっとしてた」


「元気ないみたいだね。大丈夫?」


「う、うん、へーきへーき」


ごまかすようにぎこちなく笑った。


しっかりしないと今にも表情がぐちゃぐちゃに崩れそう。


今朝偶然聞いてしまった兄と父の会話を思い出すだけで辛かった。


「瀬戸さんのお兄さんてまだ来てないみたいだけど、どうかしたの?」


探るような西原くんの眼差しにドキンとした。  


兄はあれからすぐに家を出たみたいだけど夏合宿には姿をあらわさなかった。
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