今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
「ダメだよ、ちゃんと食べないと」


「でも」


「瀬戸さんこんなに細いのに、食べなきゃそのうち倒れちゃうよ。
今日久しぶりに会ったらさらに痩せてるからびっくりした」


「そうかな、自分ではわかんない」


確かに夏休みに入ってからずっと食欲が無くて。


引きこもっていたから夏バテもしていたのかもしれない。


「お兄さんは何も言わないの?」


彼は不満げな顔で尋ねてきた。


「うん、それどころじゃなさそうだし」


「どうしてこんなになるまで放っておくんだろ。俺だったら」


「え?」


「俺のほうが瀬戸さんをもっと大切にできるのに」


「あ……」


彼の切なそうな眼差しから急いで目を逸らした。


「……」


どう答えたらいいのかわからないよ。


いまの私にそんな優しい言葉をかけないで。


心が弱っていても流されてしまいたくない。
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