今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
そうそう、ちゃんと彼女はいるんですよ。
って、言いたいけど言えない。


「このまま誰とも付き合わないで、私たちみんなの瀬戸くんでいてほしいわ」


「……」


そのうちに去年の合宿の時の話できゃあきゃあ言って盛り上がりだした。


特定の彼女をつくることが無くて誰のものにもならないイケメン生徒会長の兄。


要するにファンの女子達みんなの公的なものにして愛でている……らしい。


そんな風に思われてるなんて……兄に心底同情する。


と同時に、こういう人たちの前で堂々と私が彼の彼女ですってはっきりと宣言できないのが本当にもどかしい。


「あ、あの、兄はそういう噂話とか嫌いだと思いますけど」


どうにも我慢できないから、せめてささやかな反抗をしてみた。


一瞬あたりは水を打ったようにシーンと静かになったんだけど。


わ、どうしよ。偉そうに聞こえたかな?
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