今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
誰が見たってわかるはずだもん……。


あんなに楽しみにしていたのに。やっぱり翔くんがいない合宿は寂しい。


そう思って落ち込みながら歩いていたら窓際の席で一人ぽつんと座っている女の子の背中に目がとまった。


あれは……もしかして愛華さん?


彼女はスタイルが良くてスレンダーだけど、その背中はいつもより頼りなく小さく見えた。


表情が見える位置に移動したけど彼女はこちらに全然気が付かない。


「あ」


彼女を見て一瞬息をのんだ。


物憂げにスマホの画面を見つめてため息をついている。


その顔は恋する女の子そのものだった。


愛華さんなんだか、元気がないみたい。


もしかしたら私と同じで翔くんがここにいなくて寂しいのかもしれないな。


連絡もなかなか取れないのかも。


だからって手を取りあってお互い寂しいよねって慰め合うわけにはいかないけど……。


でも、気持ちは痛いほどわかるな。
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