今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
眉を寄せてちょっと悲しそうに呟いた。


どうしよう……。


石野くんはおそらくバレー部の人たちがたくさんいる前だから、ああいう態度をとらざるを得なかったんだろうけど。


歌ちゃんにしてみたら気分が悪いかも……。


「なんなのよ、石野のやつ、むかつく」


「歌ちゃん、あのこれにはワケが……あっちに行って話そ」


「……」


歌ちゃんは沈んだ表情でゆっくり頷いた。


かなりショックをうけているみたい。


「歌ちゃん、行こう」


「ん……」


彼女の手をぎゅっと握って歩き出した。


旅館の玄関に入るとスリッパに履き替えて部屋へ向かった。


その部屋は歌ちゃんを含めた4人部屋なんだけど、今の時間帯はみんな大広間で勉強に励んでいるはずだから誰もいないはず。


「石野……最近、電話にも出ないし変だなって思ってたんだ」


廊下を歩きながら彼女はポツリと言った。
< 365 / 443 >

この作品をシェア

pagetop