今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
「うん」


「あいつ部活の規則のことを気にしているのかもしれない」


「あ、うん。歌ちゃんも知ってたんだね?」


「うん、なんとなくそうかなって思ってたから」


「そ、そっか」


彼女にも思い当たることがあるみたいだった。


「実は、ここに来るまでずっと不安だったんだ」


「うん」


しっかりと繋いでいた彼女の手はかすかに震えている。


「私達別に付き合ってるわけじゃないのに、ばかみたい」


「うん」


「変な気を回しちゃって」


彼女の声が徐々に小さくなっていく。


「……」


「あんなやつ、こっちから願い下げだし……」


歌ちゃんは立ち止まって、とうとう項垂れてしまった。


「歌ちゃん……」


彼女の頬を伝う雫はキラキラ輝いて宝石みたいに綺麗だった。


「……」


こんな歌ちゃんを見ているだけで胸が痛くてたまらない。


横から支えるようにそっと抱きしめた。
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