今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
「うん、なんでも自分一人で完結しようとしてる。他人の気持ちを先回りして考えすぎちゃっていつも損ばかり」


彼女はちょっと視線を落として悲しそうな顔をする。


「そうなの?」


「石野は優しすぎるから」


「あれ?のろけてる?」


「そ、そうじゃないよっ」


歌ちゃんは恥ずかしそうに私から目をそらすとそのまま石野くんのいる方をじっと見つめた。


やっぱり彼のことが気になって仕方がない様子。


みんなで集まって勉強をしたあの時よりもずっと彼への気持ちが大きくなっているように見えた。


だけど、その恋は行き場をなくして迷子になりかけている。


「石野は私のことをいっつも応援してくれてたんだ。レギュラーに選ばれた日もすっごく喜んでくれて……」


「……」


「それが、変な噂のせいでこんなことになっちゃって」


ため息交じりの寂しそうな声。

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