今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
それに比べて私なんて痩せっぽちで胸が小さくて……。


「あれっ。やっぱり来たな」


歌ちゃんはニヤリと笑って、私の背後に向かって叫んだ。


「えっ?」


翔くんがまさか……。


でも、もしかしたら。


兄が後ろにいるのかなって思ってすぐに振り返った。


スカイブルーの水着を身に着けたその男の人はスラリとしていて背が高い。


逆光だったせいか一瞬だけはっきり顔が見えなくて自然と笑顔になっていた。


「あ……」


だけど、そこには口元を手で覆っている西原くんが気まずそうに立っているだけ。


「ごめん、俺で……」


「ううん」


勝手に期待して勝手にがっかりしてしまっただけ。
 

西原くんは何にも悪くない。


「こっちこそなんか、ごめん」


「今の笑った顔……」


「え?」


「超可愛かった、反則だろ」


彼は照れ臭そうに瞳を泳がせながらポツリと言った。


「あ……ええっと」
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