今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
彼女が泣きそうな声でそう言うと、今まで黙っていた石野くんが突然声をあげた。


「……そんなことないよ。歌さんは」


「……」


「凄く可愛いよ」


石野くんは拳をギュッと握り真剣な表情。


こっちが恥ずかしくなるくらい、石野くんのストレートな気持ちが伝わってきた。


だけど歌ちゃんはにわかには信じられないみたいで。


「……うそだよ、だって。
私なんて女の子として思ってないでしょ?」


「そんなことない。歌さんは僕にとってずっと可愛くて憧れの女の子だよ」


「……」


「ほんとにそう思ってる」


「ほ、本気?」


「うん」


「だったら、どうして避けるのよ?」


「そ、それはっ、その」


石野くんはウッと言葉に詰まる。


「ほら、やっぱり」


「ち、違う」


「もういいっ」


歌ちゃんが、苛々したように立ちあがろうとしたその時。


石野くんは咄嗟に彼女の腕を掴んだ。


そして、勢いこんで立ち上がりこう言った。


「どうしてかって、そんなの歌さんといつか付き合いたいって思ってるからに決まってるだろ」


「え」
< 393 / 443 >

この作品をシェア

pagetop