今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
私は兄と西原くんに向かってニッコリ笑いかけた。


「チー、ごめん俺が……」


「瀬戸さん、俺もお兄さんをあおるようなことを言って悪かったよ」


私の様子が変だと思ったのか兄と西原くんが慌てて謝ってきた。


「ううん、いいよ西原くん。遅かれ早かれわかることだもん」


けっして強がりなんかじゃ無かった。


「心配しないで翔くん、西原くん、私こんなことじゃ泣かないから」


「チー」


兄は怪訝な顔で私を覗き込む。


だって、私にとって本当に辛くて悲しいことはね、ただひとつだけ。


あなたと一緒にいられなくなること、ただそれだけなの。


それ以外は取るに足らないことだ。


そのことが今やっとわかった。


兄と一緒にいることを望むなら、こんなことにいちいちへこたれてちゃ駄目だ。


「西原くん、あのね」


私は西原くんに向き直ってそっと繋いでいた手を離した。
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