今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
「……」


「だから、あの時チーに何にも言ってあげられなくて……ごめんな」


私の手をそっと握ってそのまま目線を落とした。


「……うん」


「あの後すぐに矢代さんのところへ行って、今日までずっと泊まらせてもらってた」


「え?矢代さんのところっていうのは伊集院のお邸ってことだよね?」


「違うよ、矢代さんのマンションのほう。うちからも近いんだ」


「そうなの?」


それは初耳だった。


この4日間、執事の矢代さんのマンションでお世話になっていたなんて思ってもみなかった。


私の想像以上に矢代さんに頼っていたんだ。


執事って言う関係じゃなくてプライベートでお世話になってるってことだよね。


「うん、初めは伊集院の父のところへ行くつもりだったけど愛華のこともあるし、あそこに行くわけにはいかなくなったから」


それってもしかしたら、愛華さんの告白を断ったことと関係があるのかな。
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