今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
「うん……それはもうずっと前から決めてたことだから」


父にも同じことを言っていたっけ。なぜなんだろう。


「どうして?」


「それは」


彼は一瞬ためらった後、真剣な面持ちで口を開く。


「このまま一緒に暮らすのは無理だと思ってる。
将来のことを考えたら、瀬戸の家は出て行くしかないんだ」


「将来のことって?」


「……」


「いや、なんでもないよ」


嘘だ、まだ何か隠してることがあるような気がした。


「全部教えて、翔くんが思ってること全部。
私だって今のままでいられないのはもうわかってるよ」


「そうだな……。でも……これはまだ、俺だけが思ってるだけで……」


「なんのこと?」


「いや……その……まだちょっと早いから……さすがにこれは言えない」


片手で半分顔を隠して恥ずかしそうに瞳をそらせている。


この期に及んで、まだ何かを隠しているみたい。
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